ありがとう。隣に居させてくれて。

6年前のあの日。胸に小さな虫刺されのような粒に気づいた。

いつもなら気にしないのに、胸騒ぎがしたのかネットで調べ「乳がん」という文字が目に入り込んできた。

翌日仕事を早退し、クリニックへ。

30代前半、乳がんのリスクは低め。けれど気になる影だと…その場で細胞をとってもらい、検査にまわされた。

一週間後「残念ながら…」とドラマで聞いたセリフで始まる癌宣告。

本当にあるんだなぁと思いながら、トボトボと街の中をふらつき、人目も気にせず、気づけば、涙をためながら歩いていた。

その後、細かい話を聞き、まだ早期であること、そのクリニックで日帰り手術を受けられるぐらいのステージだったこと、2日後には手術できること、不安を拭ってくれる先生の言葉を聞き、一人歩く病院からの帰り道。

『してないことが、たくさんある』

その中には、誰かと歩む未来への希望は、全くなかった。

考えてはいけないものだと、なんとなく思っていた。

誰かに拒まれても仕方のない現実だと。

自分はよくても、相手の本心なんて、わからない。それが世間一般的なのだと。

いろんな傷つかない方法を編み出しては、自分に言い聞かせるように。

・・・・あれから、今年で6年目。隣に、居てくれ居させてくれる人がいる。

癌宣告後、乳がんの話をして、引いて離れてしまう友人もいたし、病気の話をした途端に重いと感じたのか連絡を切る人もいた。

そんな中、彼は、私に普通の扱いをしてくれた。

私は、癌患者であることを、時に自分で自分を特別扱いしたり、してほしいと相手に思うことが正直あるけれど。

この人といる時間は、なんでもない自分でいられていることの方が多い。

たったそれだけのことだと思うかもしれないけれど『ありがとう』と心の底から、そう思う。